9 君を知ってから虹を見ない(完) [君虹【完結】]

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一年前のあの日から、


 


止まっていたような毎日が、


 


今、動き出すかのようだ。


 


 


胸が高鳴る。


 


あのときのように。


 


 


松下。


 


「松下、俺の彼女になってくれ」


 


「はい。よろしくね」


 


ちょっと、はにかんで髪をかきあげる松下。どきどきする。


 


「ああ、こっちこそ」


 


ああ、松下! こんな日が本当にくるなんて!


 


と、感動に浸るまもなく椎名さんが言った。


 


「なにィ、松下、そいつと付き合うのか?」


 


「・・・いけない?」


 


「っていうかー。おまえ、俺が責任とろうかと思ってたら追いつくし!」


 


「なによ。だから、がんばって追いついたもんねえ!」


 


「うれしいんだか、うれしくないんだか・・・」


 


椎名さん、松下のこと好きなのかな。


 


僕がまたつい彼にじいっと見入っていたら、椎名さんは少しだるそうに立ち上がって言った。


 


「俺、ここらで失礼するわ」


 


「うん、じゃあ、またあとで」


 


「ああ」


 


そして椎名さんはゆっくり建物のほうへ歩いて行った。


 


 


 


22・松下・同日(1997年4月)


 


椎名。


 


貸しがある感じがすると、どうも居心地がよくなくて、


 


やさしい椎名のその心に、素直に答えられないんだ。


 


それが、愛なのか償いなのかとか、考えちゃって。


 


わかるかな。


 


ごめん。


 


勝手で。


 


 


「松下」


 


「はい?」


 


「俺の進路が決定したら、スキーに行こうって話、まだ覚えてる?」


 


「あ、うん」


 


「次の冬休みには絶対行こうな」


 


「冬休み・・・」


 


そういえば、それも待たせっぱなしだね。


 


「・・・」


 


「ねえ、それなら今度、ゴールデンウィークに北海道まで春スキーに行かない? 


 


 あとで、旅行会社のパンフもらって、まだやってそうなところ探そ^^」


 


「えっ、まじ? 行く行く!」


 


「決まりね」


 


「松下、大好きだ!」


 


「ばかね」


 


 


 


 


 


 


 


おわりっ


 


 


 


 


 


 


 


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